Gummyの日本初上陸は2007年4月のこと。当時の所属事務所、YGエンターテインメントのBIGBANGと共に来日し、日本デビュー前にもかかわらず、多くのファンを集めた。
あれから9年。彼女にとって長年の夢だったという来日単独公演が渋谷Mt.RAINIER HALLで遂に実現し、4月29日、「2016 Gummy Concert
ブルースからロックまで
「(日本での)ライブは何度かありますが、単独コンサートは初めて。光栄です」と嬉しさを隠さなかったGummy。2011年に日本デビューし、ここ日本でも活動しただけに、「日本語がうまく話せなくてもどかしい」と断りながらも、オール日本語のMCでファンを沸かす。
オープニングには映画『私の頭の中の消しゴム』の挿入歌「(私を)忘れてほしい」をチョイスし、のっけから哀切歌唱が全開に。日本デビューEPタイトル曲「ゴメンネ」は本来BIGBANGのT.O.Pをフィーチャーするが、この日はソロで。「T.O.P君もダンサーもいなくて、寂しい。でも(私には)皆さんがいる」とファンを喜ばせ、軽やかなステップ & コリアン・ラップ付きのスペシャル・バージョンで演じた。
そして赤の照明の下、歌った「記憶喪失」では、彼女のトレードマークとも言うべき、情念の籠ったブルージーな歌声が炸裂。「NO MORE DRAMA」というシャウトを織り込んだロックチューン「恋がない」ではヘッドバンクでロングヘアをワイルドに揺らし、終盤マイクスタンドを放り投げてロッククィーンに変身。
「格好いい」と拍手喝采する客席に向け「私は女ですけど、ずっと『格好いい、ハンサム』と言われてました。最近は『可愛い』とも。私のコンサートはいろんな音楽がありますので、じっとしちゃダメですよ。楽しかったら拍手したり、ジャンプしたり、踊ってもいいですよ。悲しかったら、泣いてもいいし」となおも煽る。
「OSTの女王」の貫録
スウィートな「Love Recipe」や自作曲「親愛なる君へ」という日本語曲2曲を歌った後は、髪を後ろで束ねてロングドレスにチェンジ。ファンキーなリズムに切ない想いをのせる「All for love」は絶品歌唱でファンを涙させ、AKB48の「ヘビーローテーション」は激ロックにカバー。意外な選曲に驚くファンの気持ちを汲み取るかのように「私に似合わない? 笑っちゃいますか?」と問いかけ、実はフェイバリットソングだったから選んだ、と明かす。
この曲でフロアを大きく揺らせた後は、「かつての日本での活動曲だけど、活動が続けられなくて残念だった」と悔やむ「信じてる…」や「その冬、風が吹く」「主君の太陽」といったドラマOSTから曲を披露。「OSTの女王」と呼ばれるGummyだが、「OSTの女王は私以外にもたくさんいる」と笑う。でも、コーラス隊を排し、一人で歌った「昼と夜」(from「主君の太陽」)には「私が本当の女王だ!」という彼女の叫びも納得だった。
本編最後でも「OSTの女王」ぶりを発揮し、ドラマ「太陽の末裔」から挿入歌の「You Are My Everything」を。アンコールではファンキー&ブルージーな「大人子供」でタフな歌声を見せつけ、「まだ足りない?」とちゃめっ気たっぷりにスタートした「いたずらっ子」(歌謡番組「私は歌手だ」で披露した曲)ではラップも演じて一人二役。盛り上がる客席に「最高!」と叫んでサムアップし、またもクールにキメる。さらにアンコールラストの「友達でもなればよかった」はアカペラからスタートさせ、じっくりと展開。全編フルバンドで歌い終え、夢叶った彼女の頬には涙が伝っていた。
意外なカバー曲を含め、歌手としての姿を多面的に披露したこの日のコンサート。それは彼女の歌手としての魂を感じさせるものだった。
(文 : きむ・たく)