福島県川内村での「がんばっぺ!!かわうち復興祭」にて感じた目に見えない“韓流”

「福島に行くから朝6時に集合で」

そうして私を同行カメラマンとして呼んでいただいたのは四谷の韓国料理店「妻家房」呉永錫(オー・ヨンソク)社長はじめ「東京希望キリスト教会」のみなさん。正直あまり詳細もわからず行ってきたのは、3月17日(土)福島県双葉郡川内村(かわうちむら)で行われた「がんばっぺ!!かわうち復興祭」です。

東日本大震災および福島第一原発の事故にともない避難を余儀なくされたこの川内村では、今も全住民の帰村には至っていません。同村の平伏沼(へぶすぬま)が繁殖地として有名な、木に卵を産みつける珍しい習性のモリアオガエルにちなみ「かえる かわうち」とプリントされたTシャツを着る仲間が今も全住民の帰りを待っています。

そんな川内村のみなさんを励まそうと、自身もいわき市出身という根本二郎 新宿区議やNPO法人「元気になろう福島」などの協力で行われたのが「がんばっぺ!!かわうち復興祭」です。

ようやく行政機能が再開したなど、現状を語る副村長らによるあいさつを聞く村民のみなさんの顔はけして明るいものではありませんでしたが、落語やジャズライブ、津山洋子&高樹一郎の夫婦デュオによる艶歌など演芸コーナーでは会場が一体となり大いに盛り上がりました。

そんな祭りの中で、料理を提供したのが冒頭の妻家房と東京希望キリスト教会。妻家房の厨房長らが腕を振るう中、教会ボランティアによるバケツリレーであっという間に350人分の韓国料理が提供されました。プルコギも少し甘めのすき焼き風に味つけするなど、この日のために万端に準備された料理は大好評。

四谷から川内村まで往復8時間に対し、滞在できたのは4時間とわずかでしたが、大きく手を振りながらバスを見送ってくださった村民のみなさんの笑顔が印象的でした。

ところで福島からの帰り、ふと思い出したのが昨年大久保公園で行われた「東日本大震災復興支援 韓日友好チャリティー広場」(関連記事:コリアンパワーで新大久保から東北を支援!東日本大震災復興支援 韓日友好チャリティー広場)。

この時も在日本大韓民国民団(民団)や在日本韓国人連合会(韓人会)が東北応援のために日韓アーティストによるライブステージやチャリティーオークションなどを開催し、その収益を被災地のために寄付しました。

ライブステージ目当てに会場には多くの「韓流ファン」がかけつけ大いに盛り上がりましが、少し気になったのがイベント終了間際です。
大人気の新大久保発男性アイドルグループがステージを終え会場をあとにすると、残りのチャリティーステージには目もくれず大移動を開始するファン。しかもそのアイドルグループを必死で追いかけるため、屋台ブースの荷物をなぎ倒し、われ先にと急ぐ信じられない光景が見られました。

そうしてイベント終了まで残っていたのは、主催者はじめ東京韓国学校からボランティアに来た生徒ら、黄色いTシャツを来た在日韓国人ばかりでした。

さらにもう1つ思い出されたのは、新年に代々木公園で行われた韓国グルメフェスタ(関連記事:大国男児・Block Bも出演!韓流グルメフェスタ「韓流グルメ日本一決定戦」レポート)。

こちらのテーマは被災地支援ではなく、東京を中心とした韓国料理店によるお祭りでしたが、やはり被災地の食材ブースが設けられていました。
初日こそ集客に苦戦していましたが、2日目には盛り返し大きな成果を上げ、また売上と来場者による投票から第1回グランプリに輝いたのが、全員日本人スタッフという店舗であったことも、国籍問わず韓国料理を愛し切磋琢磨するからこその結果として興味深いものでした。

しかし、その後このイベントに対する評価をインターネットで見る限り、中傷的な内容が大部分です。あまりにバカバカしく内容を紹介する気にはなれませんが、明らかに会場に足を運んでいないまま、インターネットだけで見た情報をインターネットで拡散している状況です。

日本人だけに限らず、逆に震災を揶揄するなど韓国人からもこうした、とにかく相手の存在・言動に反抗したいという「反感」による心ない行動がときおりニュースでも見られます。
まさにお互いの反感が行動となり、またそれが他方の反感を誘発する状況でしょう。

さて話は戻り、今回の川内村から四谷に到着したところで呉社長はじめ数人での夕食となりました。
みなクリスチャンの方なので食事の前に祈祷をしていたのですが、韓国語の祈祷から聞こえてきたのは、やはり被災地に対する祈りの言葉でした。
復興祭はすでに終了し、目の前に住民の方々がいるわけではありません。お互いこの日の労をねぎらい、ほっと一息ついてもなお、その場では目に見えない被災地に心を向けていたのです。

「共感」とは、誰かがつらい表情をしているときに、相手が「つらい思いをしている」と理解するだけでなく、自分もつらい感情を持つこと。先ほどの「反感」とはまさに対極にある感情でしょう。

イケメンを盲目的に追いかけたり、雑誌やインターネットだけを読んでいても、こうした共感を持つ人々の行動は目に見えてはきません。
こうした“韓流”の共感があることを目の当りにした1日でした。

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