バッドボーイなTHE HYSTERICSが2度目の来日 コリアンV系ロックの元祖がロックンロールでアゲまくる!

今年2月、初来日を果たした爆走ロックン・ロール・バンド、THE HYSTERICS(ザ・ヒステリックス)が再襲来。8月14、15日の二日間に渡り、都内ライブハウスでホット&ワイルドな演奏を繰り広げた。

キム・セホン(ボーカル)、チョン・ユファ(ギター)、米国ミシガン出身のバイリンガル、ニック(ギター)、カン・デヒ(ドラムス)、イ・チャンヒョン(ベース)からなるTHE HYSTERICS。中でも、フロントに立つセホンはK-POP界初のヴィジュアル系(V系)ロックバンド、EVEのボーカルとあって、知名度は抜群だ。また、日本での活動経験もあり、2012年には日本のV系バンド、DuelJewelと共にCDをリリースし、両者によるジャパンツアーを敢行。新大久保にも縁があり、あるライブハウスのオープニングイベントでは、エアーギタリスト金剛地武志との即席セッションでフロアを総立ちにさせた。
そんなセホンが中心となる彼らは結成2年目。が、全員が10年以上のキャリアを持つベテランゆえ、初めて彼らを見る人をノリノリにさせるなんてのはお手の物。

15日(会場:中野新橋 MELODIA)も、ニックが「前回の来日時は、毎晩日本のビールを飲んで何も覚えてないけど、オーディエンスが僕らをロックンロールさせてくれた」とニクイ言葉で沸かし、セホンは「今日はライブじゃなくて、パーティー!」とアジテーション!とことんパーティー仕様なロックでフロアをアゲまくった。ワイルドで格好よくて、アツい5人に話しを聞いた。

(前列左から)セホン/デヒ/チャンヒョン/ニック (後列) ユファ

―― バンド結成の経緯からお聞かせください。

セホン
僕とユファさんが以前からの知り合いで、二人で「80年代メタル、グラム・メタルのようなバンドをやったらいいんじゃない?」と話してて。最初は雑談レベルだったんだけど、本当に実現したら面白いと思い立ち、他のメンバーにも声をかけました。

―― みなさんは今、このバンドだけ?

ユファ
デヒさんだけはバンドを4つくらい掛け持ちしているけど、他のメンバーはここだけです。

―― バンド歴が一番長いのは?

セホン
僕です。25年くらい活動していますから。ヘビーメタルのエクスタシーというバンドから始めました。1995年にバンド名をGIRLに変えてデビューし、2枚のアルバムを発表して解散。それからEVEというバンドを始めて、10枚以上発表しています。

―― それだけ芸歴が長いと、今、メジャーで活動しているアイドルバンドは子供みたいに映るんじゃないですか?

セホン
確かにそう。でも、そうした子たちとは音楽的なルーツが違いますよね。

ユファ
90年代後半のセホンはとっても有名だったし、今のアイドルバンドよりも全然売れましたよ!

―― 今は事務所に所属せず、セルフ・マネージメント?

セホン
はい。もちろん、いいお話をもらえたら、前向きに考えますが、僕らの音楽を理解してくれるレーベルがないのが現実です

―― 目指すのはグラム・メタル・ロック?

セホン
そうです。だから、ファッションやヴィジュアルにもこだわっているし。

―― 例えば?

セホン
改めて聞かれると、別にないんですが(笑)

ユファ
ちょっと不良っぽい感じとか?

チャンヒョン

ユファさんのヘア・スタイルは不良っぽいでしょ?

ユファ
ワイルドというか、ただ清潔さとは無縁かな。

―― 皆さんのタトゥーもワイルドにキマっています。

セホン
音楽性の深化と共に、タトゥーもどんどん増えています。

―― チャンヒョンさんの腕には“煕”という文字のタトゥーが見えますが?

チャンヒョン
奥さんの名前から文字を一つとりました。

―― いい話ですね。ニックさんとユファさんはタトゥーがありませんが……。

セホン
韓国ではタトゥーに対して厳しく見る人もいるし、ニックは大学で英語教授をやっていますから。

―― 大学教授がタトゥー、バリバリってワケにはいきませんね?

ニック
それは仕事柄、やっぱりね。

ユファ
僕はただ痛いっていう理由からだけど(笑)

―― 歌詞はすべて英語ですが、それは世界進出を目指したいという思いから?

ユファ
メタル、ハード・ロックは元々西洋の文化だから、世界レベルに近づけようとするなら英語の方がいいんです。

セホン
欧米のハード・ロックと同じことをしようとするなら、韓国語だと難しい面があります。英語で歌うことで、結果的に海外進出に結び付くなら、もっといいし。

―― それが可能になったのはニックさんの存在が大きい?

セホン
確かに。

ニック
みんなのアイデアを受け取って僕が詞を作っています。

―― ところで、セホンさんのツイッターのアカウント名はeveguyですが、今もEVEのボーカルだというお気持ちがある?

セホン
EVEは10年以上やってきたし、自分の歴史だから、僕はいつだってEVE。解散したとはいえ、EVEの名前を捨てることはできません。

―― 以前は日本でも活動していましたよね。

セホン
やっぱり、V系ロックの本場でやってみたかった、という思いがあったから。EVEはV系と呼ばれていましたが、日本のV系とは違って、ポップロック寄りでした。ツアーで日本を廻ってみて、日本と韓国のライブハウス文化が違うことも分かったし、日本のロックを肌で感じることができて、いい経験になりました。

―― EVEと今とでは音楽性が全く違います。

セホン
韓国ではバラードがヒットするから、EVEではロック・バラードがメインでした。ただ、それは僕の本心ではありません。THE HYSTERICSをやってみて、「僕がずっとやりたかったのは今のメタル路線なんだ」と実感しています。

―― とはいえ、テレビ向けの売れ線音楽なんか、すぐ作れますよね?

全員
それはもちろん!

セホン
やろうと思えば、いつでもね。例えば、チャンヒョンさんは“100%”に曲を提供しているし。

―― K-POPプロデューサーの“ヘギョルサ(解決師)”はチャンヒョンさんなんですね。

チャンヒョン
彼らとは“兄貴、弟”の仲。彼らが去年の夏に発表した「君は綺麗」は僕が作りました。

―― 最後にバンドの今後の展開について教えてください。

セホン
今、初の正規アルバムを作っている最中です。それを引っ提げて、アジア、世界に進出してみたいですね。

―― 楽しみにしています!

(文:きむ・たく)