EPIK HIGHのジャパンツアーは遊び心満点、貫禄十二分

キャリア15年目を迎える、韓国のベテラン・ヒップホップ・グループ、EPIK HIGHが自身2度目となるジャパンツアー「EPIK HIGH JAPAN TOUR 2015 ~Show must go on~」を開催。5月24日にそのファイナル公演(@東京・新木場STUDIO COAST)を行い、日本盤ベストアルバム『THE BEST OF EPIK HIGH ~SHOW MUST GO ON~』収録曲を中心に計19曲を披露した。

韓国のヒップホップ・グループはMC主体で、DJ=固定メンバーというケースが少ない。が、TABLO (タブロ)、MITHRA (ミスラ)、DJ TUKUTZ (ディージェー トゥーカッツ) から成る彼らはデビュー以来、日本のRHYMESTER的な2MC+1DJをキープ。かつ、こうした編成で韓国のメジャーシーンで成功しているのは彼らのみ。それゆえ、3人の結束力はどんな現場でもブレ知らずで、それがライブ・パフォーマンスの高い熱量となって表れる。

何より印象的だったのは、彼らがオーディエンスを目いっぱい楽しませようとしていたことだ。コント的な側面もあった曲間のトークは会場の雰囲気を終始和ませ、同時に彼ら自身がライブを楽しむ姿が観客をさらにアゲていく。ファンからのリクエストにその場で応える「GENIE TIME」も日本のヒップホップミュージシャンには見られないファンサービス。アラビア語で妖精を意味する「ジン」由来の言葉「GENIE」よろしく、ファンの願いをかなえてあげるこのコーナーで、3人はBIGBANG の「FANTASTIC BABY」を踊りながら熱唱。セクシー・ダンスも挟んでファンを乱舞させた。

“楽しませる”という点で鍵を握ったのはDJ TUKUTZだ。DJといえば、2ターンテーブルとミキサーがセットされたブースが定位置だが、彼はそこにとどまることなく、ステージを縦横無尽に活躍。ダンスも演じフロアを徹底的に沸かせる。愛の裏面にある執着と狂気をダンスビートにのせて歌う「FAN」では彼がフロントに出て、一列に並んだ3人が駆け抜けていくような振付が見せ場に。さらにアンコール曲の「BORN HATER」ではゲストラッパーのパートをカバーし、八面六臂の大活躍を見せた。

また、ベテランならではの余裕ある展開も◎。オープニングに続いた「FLY ft. AMIN. J (from SOULCIETY) 」は観客に何度も「E! P! I! K!」とコールさせ、さらにイントロをループさせて煽りに煽って「叫べ~」とシャウトしながらスタート!

セツナ系ソングを披露する際は、「湿っぽすぎる」と言いながら途中でカットし、すぐさまアガるメッセージソングを放って緩急をつける。そして本編終盤はトランシーな「HIGH TECHNOLOGY」、DJ TUKUTZがまたもフロントに立つ「ONE ft. JISUN」、そして「NEW BEAUTIFUL」をノンストップで歌い、フロアを絶頂へ。アメリカで開催されるSXSWでもかの地の観衆を熱狂させた鉄板メドレーはここ日本でも鉄板だった。

こうした遊び心溢れる展開を支えるのはジャンルレスなサウンドと、詩的でポジティブなメッセージ。この土台がしっかりとしているからこそ、彼らの遊び心は貫禄のある高いエンターテインメント性を放っていた。

(文:きむ・たく)