K-POPカバーダンスの祭典「DREAM ON Vol.10」が8月31日(日)、この夏を締めくくるように開催された。
2011年の開始から早くも第10回、区切りとなるこの回からあらためて「DREAM ON!」を、そしてK-POPカバーダンスをふりかえりたい。
現在東京だけでも毎週末、なにかしらのカバーダンスイベントが開催されているといっても過言ではない。
ダンスの魅力をとことん堪能する「ダンスイベント型」、特定のアーティストを中心に音楽とダンスショーケースを楽しむ「ファンイベント型」と2分すると、後者からたまたまK-POPカバーダンスを知り、次第にダンスイベントにも参加するようになる来場者も多い。
新規結成のダンスチームもますます増えるとともに、イベントではまるでアーティスト本人のライブのように来場者も掛け声を響かせる。また新大久保界隈で開かれる知人同士の小規模な交流パーティでも、音楽に合わせて自然とダンスタイムが始まるなど、今やK-POP自体の人気とは独立したシーンが形成されている。
そんな中、最近イベントにはより「テーマ性」が重視される傾向がある。
音楽番組で1位となったことがないアーティストだけの「報われナイト」や、女性アーティストを特集しながら観客参加型のゲームも取り入れた「Girl Power」など、ダンスにプラスアルファのテーマを設けたイベントの人気が高まっている。
さて、前置きが長くなったが今回の「DREAM ON!」(以降ドリオン)は、そうしたシーンの高まりの中でついに第10回を迎えた。
Ustream直前生放送にて主催の清水氏が「頂上決戦」と位置づけた通り、第3回以降続けて2日間開催だった日程が1日集中に。
結果として出場枠が大きく減ったことが起因してか、発表された演目には大きな驚きがあった。KARAやSISTARといったおなじみのアーティストの楽曲は1つもなく、やや「ひねり」の利いたアーティストの演目が目立った。
これは出場枠が減ったからこそ「曲かぶり」を避けるため、ややマイナーな楽曲での応募に傾いたと考えることもできる。
以上背景をふまえ、ダンサーの声とともに第10回をふりかえりたい。
演出には見えない苦労も……
ドリオンと言えばダンスのクオリティはもちろん、照明に音響レベルの高さも大きな特長だ。
1,000名規模のキャパシティを誇る大型ライブハウス TSUTAYA O-EASTを贅沢に使った圧巻の演出。その大舞台でのパフォーマンスだからこそ、各チーム演出にもさまざまな苦労があるようだ。
「踊ってる最中も実は、ラストのマジックのことばかり考えていました。以前リハーサルでイスごと落ちて足がはれあがったこともあったので……」と語ったのは、IUの“The red shoes”を踊ったRin@。
そのマジックとは、台上のイスに腰をかけ、ダンサーが旗を上げる瞬間に台から後ろに飛び降り身を隠すものだ。
普段大阪で活動するRin@は、急きょ東京で手配したイスと台を使いこのマジックに挑戦。大観衆の見守るプレッシャーの中、靴だけを残し見事に姿を消した。
また、衣装で一際会場の注目を集めたのはM-Pactだ。
ORANGE CARAMEL同様、頭にオレンジジュースを載せたメンバーの登場とともに会場は一気にざわめいた。
「前回出演ではゾンビの演出で若干会場も引いていた(?)ので、今回はかわいくインパクトを出したかった」と狙いを話したM-Pact。
その仕組みについては「オレンジジュースは実はジャスミン茶です。容器もストローも全部ボンドで固めてあり絶対にこぼれない。また使えるように、今もまだ冷蔵庫に入れています(笑)」
アーティスト本人に「なりきる」ために
ダンスや演出に見えないこだわりでは、BAXXの話しが興味深い。
BAXXは、VIXXのカバーダンスチームとして高い実力と人気を兼ね備えたチーム。今回も“기적”でその貫禄を見せつけた。
そのBAXXに活動へのこだわりを聞くと、日常からアーティスト本人たちと同じ本を読んだり映画を観たりしているという。
もちろんダンス練習が二の次なわけではない。
以前取材に訪れた大阪のイベントにBAXXがゲスト出演していたが、イベント終了後は打ち上げでも観光でもなく、そのまま現地のスタジオへ練習に向かった様子に驚かされたこともある。
そんなBAXXの節目となったできごとが、2013年10月5日ソウルで行われたVIXXファンミーティング。イベントを前に募集されたカバーダンスコンテストにて、BAXXはファン投票1位を獲得し韓国へ招待された。
カバーダンサーたちにとって、本人の前で踊ることは夢の1つだと言えるが、なんとBAXXはファンミーティングにて本人たちと「一緒に」踊った経験を持つ。
貴重な経験をしたBAXXだからこそ、ダンスのみならず本や映画など同じ情報源から得たインスピレーションを通じ、本人たちの現在の心境まで追い求めているのだ。
VIXXカバーダンスチームとしての目標や他チームを意識することはないか、BAXXメンバーのYUNHAにたずねると、「1番のライバルはVIXXです」と力強く語った。
「KARAチーム」に見る楽曲選びのポイント
ドリオンではダンスのコピー度や本人たちへの愛が強く感じられる一方、本人たちを無視し徹底して「踊りたおす」スタイルの異色チームがいる。
毎回KARAの楽曲で出演している、その名も「~殻~」(から)だ。
しかもその~殻~、今回はまさかのWassupデビュー曲“Wa$$up”でステージに立った。
K-POPアイドル界で際立つ「黒さ」を醸すWassup。それがドリオンでも異色の~殻~と奇妙にハマり、会場中が大興奮のステージとなった。
しかしそもそもなぜKARAでなかったのか。メンバーのASAMIに話しを聞いた。
「新曲が早ければその可能性もありましたが、タイミングですね。これまで踊っていない中で、お客さんと一緒に盛りあがれる曲があまりなかった。実はAOAやT-ARAも悩んだのですが、やはりアーティストのヴァイブスが自分たちに近いと考え、Wassupを選びました」
またKARAと言えば「博多のニコル」ことOJO擁する¢attyも、これまでのKARAから一転し通好みの楽曲、Kiss&Cryの“DOMINO GAME”に挑戦した。
「今回は新生¢atty4人で初のドリオン。新生KARAの新曲もまだ出ていなく迷う中、Kiss&Cryの楽曲は力強さの中に女性らしさがあり、ダンススキルを求められる振り付けも。新生¢attyの良さを表現できると思い、この曲を選びました」とYuriはその理由を明かした。
同様にKARAで連続出演してきたCoen Sistersも、RaNiaの“Just Go”を選曲。「曲調も気に入り、セクシーでクールなダンスにも挑戦して見たかった」と話した。
3組いずれもKARAをベースとしながらも、新曲リリースタイミングや今その瞬間のチームらしさを重視し、枠にとらわれない楽曲選びをしていることがわかった。
“something”での応募にかけた想い
今回、ひそかに楽しみにしていた2つのチームがある。
Agirlsに4line。Girl’s Dayカバーの代表格とも言える東西の人気チームが、同じ楽曲で同じステージに立った。奇しくも衣装も同じ白バージョン。
イベント中には語られなかったそれぞれの想い。
「Agirlsが“something”で応募することはTwitterで知っていた」という4lineにまず話しを聞いた。
「私たちはスキルが無く、ダンスでは勝てないことを自分たちでも理解していたので、本家の妖艶さとか滑らかさとか、とにかく雰囲気を出せるよう意識しました。あとは動きをそろえること」と冷静に自分たちを分析した4lineメンバーのmachi。
しかし、困難な状況でも同じ楽曲で応募したことについては「曲が発売された時から『“something”をドリオンでやる!』と決めていたので迷いはありませんでした」と強い気持ちを語った。
一方、前身となるSPSNから数えれば5年のキャリア、関西ガールズカバーチームの顔とも言えるAgirlsも、今回にかけた並々ならぬ想いを語った。
「今回は1日開催となり、出場枠も大幅に減りました。このままだと落ちると思い、まず『Agirlsがどう変わるべきか』を考えました。
今まではやりたい曲をそのまま応募していたのですが、今回は過去の最終ブロック動画を全て見直すところから。やはりそうしたチームはただ踊るだけでなく、完全に『ショー』ですよね。
“something”ならそれができると思い、応募が多いのもわかっていましたが、この曲以外に考えられなかった」
続けて出演順、またイベントを終えての感想をリーダーのMakiは次のように話す。
「応募するにあたり、まずは合格を、そして実は最終ブロックでの出演を狙っていました。なのでタイムテーブルを受け取った時は本当に驚きましたね。最終ブロックの、しかも『サブトリ』でしたから。正直体が震えました。
踊ってみての実感は、フリができたとかミスしなかったとかでなく『全部出し切れた』という感覚。シンクロではなく、歌詞の意味や本人たちそれぞれの感情ふくめた世界観を表現できたと実感しています」
「夢の舞台」を終えて
今回も、舞台上に舞台裏と多くの涙を見た。
出演の夢かなわず涙を飲んだチームもあれば、ドリオンを最後にグループを卒業するダンサーも。
“Shampoo”を踊り、MainaにRi-youngとともAnnyong★Schoolを卒業したMaikaは、イベント後「最後がドリオンで良かった」と噛みしめるように話した。
今回はイベント終了後いくつかのチームに話しを聞いたが、そこにはアーティストや楽曲へのこだわりはもちろん、ドリオンという大きな舞台に立つため、応募時点から練習を通じた苦労や信念を垣間見た。
K-POPカバーダンサーは学生に社会人、職業も立場もみなバラバラだ。練習に割ける時間も事情もそれぞれ異なる中、チームを組み衣装をそろえて活動し、イベントに挑戦する。
日本でその頂点たるイベント「DREAM ON!」は、彼らの練習成果と表現を全て受け止め、照明・音響ふくめ何倍にも演出する。
冒頭、最近のイベントには「テーマ性が求められている」とした。そうした中、DREAM ON!がダンサーに観客をひきつけてやまない魅力とは何か。
それは、数か月にもわたる練習や渾身の衣装で臨む憧れの対象であり、観客も一体となり最高の「夢」を見れること。
つまり1日限りの「夢の舞台」であり続けることそれ自体が、DREAM ON!の固有性と最大の魅力ではないだろうか。
DREAM ON Vol.10 タイムテーブル
A BLOCK | |
2MIN | 東方神起 /수리수리(Spellbound) |
Show!Show!Generation! | 少女時代 / Mr.Mr. |
chouette* | HELLOVENUS / VENUS |
TINY-X | TINY-G / minimanimo |
Juliette☆ | SHINee / Evil |
BeatRepublic | BoysRepublic / 전화해집에(PartyRock) |
防災少年団(BCS) | 防弾少年団(BTS) / Boy In Luv(상남자) |
B BLOCK | |
韓国食堂 | Ladies’ Code / Bad Girl |
Chamaeleon | SPICA / You Don’t Love Me |
¢atty | Kiss&Cry / DOMINO GAME |
Coen Sisters | RaNia / Just Go |
FLASHY | SHINee / Replay |
Ladies’♡Generation | 少女時代 / The Boys |
Rin@ | IU / The red shoes |
C BLOCK | |
ALL GENERATION TOP | 防弾少年団(BTS) / We Are Bulletproof |
KAZCHY&Who ft.yuja | 멘붕(MTBD) / CL |
INPINITE | INFINITE / LastRomeo |
P2YST | NU’EST / Beautiful Ghost |
BAXX | VIXX /기적 |
Re:BLOSSOM | 2PM(Jun.K) / LOVE&HATE |
joa☆FRIEND | BOYFRIEND / 너란여자(obsession) |
4line | Girl’s Day / something |
D BLOCK | |
美華時代 | 少女時代 / Mr.Mr. |
~殻~ | Wassup / Wa$$up |
QieeN | GP Basic / Pika-Burnjuck |
Mpact | Orange Caramel / Catallena |
Annyong★School | AfterSchool / Shampoo |
MIYASISTAR | Steller / Marionette |
BATS | Jun Hyo-seong / Good-night Kiss |
UMAIBOW | AOA / miniskirt |
E BLOCK | |
PGmix | Block.B / Jackpot |
4C crew | 4minute / 오늘뮈해(Whatcha Doin’ Today) |
ガラガラ蛇 | 防弾少年団(BTS) / Boy In Luv(상남자) |
AMUZ | 2NE1 / CRUSH |
M☆Reverse | BIGBANG / 흔들어(Shake It) |
EXO-Q | EXO-K / Overdose |
Agirls | Girl’s Day / something |
TVXQ(株)メディカル派遣社員 | something / 東方神起 |
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