2012年に韓国Mnetでスタートし、今年シーズン5に突入。韓国に空前のHIP HOPブームをもたらした、ラッパーによるサバイバル番組「SHOW ME THE MONEY」(以下、SMTM)! そして、そのスピンオフ番組で女性ラッパーによるバトル番組「UNPRETTY RAP STAR」(以下、UNPRETTY)がコラボし、日本上陸。3月20日、東京渋谷WOMBにて「SHOW ME THE MONEY & UNPRETTY RAP STAR JAPAN SHOWCASE Vol.1」を開催した。
昨年放送のシーズン4ではアイドルからアンダーグラウンドのMC、そしてアマチュアまで約7000人の申し込みが殺到し、今やSMTMの存在感はマンモス級だ。今回はシーズン4でTOP10に進出したMicrodot(マイクロドット)、TOP12進出のHanhae(ハンへ)、そしてシーズン2にエントリーしたKanto(カント)、またUNPRETTY からKisum(キソム)とYuk Jidam(ユク・ジダム)がステージに立った。
トップバッターはジダム。
フロアの約8割は女性が占め、ジダムが登場するや否や、黄色い声援が飛ぶ。幕開けからK-P HOP(韓国HIP HOP)の高まりと人気を実感せずにはいられなかった。
彼女がオープニングに選んだのは番組のセミファイナルで歌った「on & on」。
先輩女性MC、ユン・ミレの影響でHIP HOPの道に進んだ過去を振り返り、自分の生き様をリアルにラップし、SMTM3用に準備した「Ulleri」では会場の雰囲気を一変させ、ノリノリにフロアをコントロール。そして「徹夜した」では危険度高めなトラックにラップをのせ、ヴァーサタイルな姿勢を見せた。
続いたのはソロMCにして、韓国を代表するHIP HOP~R&BレーベルBRAND NEWMUSICに所属するグループ、TROYのメンバー、カント(日本初登場)!
限られた時間で自分のラップをできるだけ多く見せたいとの思いからだろう、彼は3~4曲のメドレー、2セットで臨み、ファンに贅沢な時間をプレゼントしてくれた。
オープニングトラック「ラップデザイナー」を歌えば、館内が「ラップデザイナー」という掛け声で一つになり、ファンは彼の日本上陸を心から待ち望んでいたことが分かる。そして時おり、こぼす笑みに場内が沸く。「僕に会いたかった?」と問いかけつつ、「僕も会いたかったです」とフロアを喜ばせるカント。日本語の学習も始めたと明かし、フロアにカタカナでのサイン入りキャップをプレゼントなんてサービスも!
メドレーの2セット目では、TROYのラッパーとしての顔も覗かせ、彼らの代表曲「変わって行く」「グリーンライト」を2連発。アーバンでスタイリッシュなサウンドに合わせてラップすれば、彼の表情もセクシーに映る。そしてエンディングにはアイドルグループ、INFINITEのキム・ソンギュをフィーチャーしたソロデビュー曲「What you want」をセレクトし、ソロMCとしての気概をきっちり見せつけた。
最後は「お疲れ様でした。Thank you」と声にし、その佇まいはトコトン格好いい。ソロとしてチームとして、今後を二重に期待させるライブだった。
カントからバトンタッチされたキソムはジダムと同じく、セミファイナルまで勝ち残った実力者。
指ハートのダブルサイン付きでキュートに演じた「You & Me」の後は、セミファイナルで歌った「To Mom」をスペシャルな演出で披露し、会場から選んだ母娘をステージに招待。
歌いながら二人に薔薇の花をプレゼントし、最後は娘さんに「親孝行してください」とメッセージを送りラブリーに構成していく。が、締めに選んだ「superstar」はラップゲームを戦い抜くための闘争歌。振り幅の大きさを印象付けるステージだった。
続いて登場したマイクロドットはこの日、最も長い芸歴を誇り、2006年、12歳の若さでデビュー。
当時はラッパーのDOK2と共に、ALL BLACKというチビッ子HIP HOP・デュオを結成していた。が、デュオの解体後、彼は一線から姿を消し、SMTMへの出演と共に再び表舞台に。昨年7月に初のソロEPをリリースし、注目を集めている。
彼の実兄はBRAND NEW MUSIC所属のPHANTOMメンバー、サンチェス。EPのプロデュースにはサンチェスの他、BRAND NEW MUSICクルーも参加し、充実作となったが、彼は事務所に所属しない。セルフ・マネイジメントのインディペンデント・アーティスト故、地上波で見る機会は少ないが、踏んだ現場の数では負けない。来日前にはアメリカでライブをやっていたというマイクロドット。現場慣れしたステージングは堂々とし、オーディエンスとの交流も積極的に図り、煽り上手にして沸かせ上手。「私の名前は……」と言って自己紹介しようとした瞬間、会場から「マイクロドット」との声が飛び、驚いた様子も印象的だった。
自分の哲学を込めた「DOWNBAD MOVEMENT」に続いた新曲「HELLA TRILL」ではこの日のフロアの光景をPVに収めるという。そんなエンターテインメント仕立てのライブを締めたのは盟友とも言うべきDOK2とのコラボ曲「GOAL KEEPER」! インディペンデント魂を炸裂させたこの曲に、彼の熱き精神を見た。
トリを飾ったのはPHANTOMのメンバーでもあるハンヘ。
チームとしては来日経験ありだが、ソロでは今回が初となる。そんな彼が用意したスペシャルはKREVAの「音色」カバー。ショート・バージョンながら日本語で歌い、ファンを楽しませた。
また、PHANTOMのメドレーを一人で演じた際には、ダブステップなトラックからロマンティックなR&Bまで、チームの芸幅の広さを一人で体現。「ハネたん」という愛称も定着し、ファンからそう呼びかけられると照れる彼だったが、発表したばかりの新曲「I USED TO」も初披露し、凛々しさを際立てていた。
そんな個性豊かな5人がソロステージを見せた後は、全員参加のマイクリレーで、ハッピーにフィナーレ。
UNPRETTY2で披露された「Don’t stop」をフリースタイルも交えながら歌い繋いでいけば、いつまでも聴いていたくなるような心地よい刺激を感じることができた。K-HIP HOP界のタレントの豊富さ、層の熱さを体感することができたこの日。これからもSMTMとUNPRETTYが未知なる才能を発掘し、僕らを楽しませてくれるに違いないと確信することができた。
(文:きむ・たく)