Jewelry、A PINK、キム・テウが音楽で文化交流「日韓交流おまつり2013 in Tokyo」K-POPコンサート

日本・韓国両国でそれぞれの文化理解を深めることを目的とし開催された「日韓交流おまつり2013 in Tokyo」の最後を飾るコンテンツとして「K-POPコンサート」が9月22日(日)日比谷公園の特設ステージで催された。

食文化を伝える出店や伝統芸能のパフォーマンス等を楽しむ休日の家族連れで賑わっていた当日の日比谷公園。
ステージ前の客席エリアは事前申し込み抽選となっており、コンサートパートの開始少し前になるとそこに入れなかったファン達で立見席はひしめきあい始めた。
皆少しでもステージを見ることが出来る位置に、と必死だ。

オンタイムで壇上に上がったのは司会の古家正亨と李由美。

今回このコンサートパートに出演するアーティスト達が「このイベントのためだけに当日来日して参加してくれる」とコンサートの希少価値を高める前フリをして場を盛り上げる。

最初に登場したのはJewelry。

“Look At Me”、”Back It Up”、そして現時点での最新シングル”Hot & Cold”の、現在の4人のメンバー体制になって以降の楽曲を披露した。
レトロでエキゾチックなリズムトラックの”Look At Me”でのセクシーなパフォーマンス、”Back It Up”の賑やかな可愛らしさと曲毎に持ち味が変わるが、やはり”Hot & Cold”でのウェットなメロディーと彼女達のやんちゃな魅力の融合にひきつけられた。

この曲は歌番組チャートでA PINKの”No No No”と1位を争ったのも記憶に新しい。
Jewelryは2001年デビュー、現在活動中のK-POP女性アイドルでは最古参と思われるグループであるが、現在はデビュー時メンバーは全員居なくなり、2008年以降に加わったメンバー4人で構成されている。
こうして現在のメンバー体制になって以降の楽曲をまとめて耳にすると、少しずつ彼女達が独自性を得ようとしているのが手に取るように判って面白かった。
グループ名の看板は古くとも、現体制としてはまだまだ新鮮なグループだ。
彼女達、これからまだまだ面白くなるかもしれない。

続いては「日韓交流おまつり」の趣旨に沿い、日本からのアーティストJAMOSAが登場。

JAY’EDと若旦那(湘南乃風)をフィーチャリングしたヒット曲”何かひとつ”と最新シングル”SHINING”の2曲を歌い上げた。
またMCではU-KISSのメンバーとのコラボレーション楽曲”Together”について言及。
圧倒的にアウェイとも言えそうな舞台で小さな身体で一人きり歌いきった彼女に対し、観客は楽曲に合わせた手振りで応えた。

続いてはこの方々です!、と司会の二人がふると、ドッと観客が沸いた。
本日の多くの観客が待ち望んでいたA PINKの登場だ。
このコンサート、本来出演者はシークレットなのだが、事前に各方面でどのグループが出るという情報が出回っていた。
会場に集まる、特に立見席の最前列を取り囲んだのは熱狂的なA PINKファンで、彼女達が舞台袖から登場した瞬間、この日一番の歓声が上がった。

男性ファンが圧倒的に多いと勝手に思っていたが、女性のファンもかなり多く、黄色い声援が印象的。
まず1曲目は彼女達に初めての歌番組チャート1位をもたらした”No No No”。
可憐な彼女達の魅力を生かしたポップなメロディーながらもマイナーキーの味付けでホロリとさせるような感傷を付け加えたこの曲、生で演じられるのを目の当たりにして、やはり彼女達の魅力を最大限に引き立てた曲だという思いを新たにした。

日本語を交えながらのMCの後に披露されたのは”My My”。
デビューした2011年のヒット曲で彼女達の代表曲。

メインボーカルであるウンジが繰り出すハイトーンのボーカルが印象的で、これはCDで聴くものを遥かに凌駕して客席中を刺すように響き渡った。

惜しまれながらの最後の楽曲は”Bubibu”で、奇しくも彼女達の最大の魅力である可愛らしいイメージを強調した曲のみでステージは構成された。

A PINKは可愛らしいことに対する潔さ、というようなものが圧倒的だった。
可憐さを強調することに主眼を置いた機能的な楽曲と振り付けも勿論だが、メンバー6人それぞれが異なる個性を持ちながらもグループ総体で見ると純粋さ、可憐さというイメージに焦点が定まっている。

今回の衣装はカーキのスカートに薄いピンクのシャツという”No No No”活動時のバリエイションのものだったが、それでもまるで純白のワンピースを着て歌い踊っているような雰囲気が彼女達にはある。

扇情性が論争を巻き起こす程にセクシーさを競い合うようになっているK-POPガールグループの昨今の潮流において可憐なイメージのままでい続けようとする彼女達が突出し、結果的に”No No No”で念願の一位を獲得するに至った。
今後今回のような小規模な会場で至近距離で見ることの出来る機会があるかどうか判らないが、彼女達の可憐極まりないステージは必見と言っておきたい。

A PINKがステージを去って客席にある種の燃え尽きが感じられた中、それを一瞬でひっくり返したのは今回出演唯一の男性アーティスト、キム・テウ。
ステージ袖からテウが現れると客席から歓声とも溜息とも言えないような、どよめきが聞えてきた。

大きい、という声が漏れ聞こえる。
それまで女性ばかりがステージに上がっていた、ということを差し引いても明らかに大きい。
後にMCで身長190cmと明かされ、179cmあるというかなり長身であるはずの古家正亨が横に並んで可愛らしく見えるというマジックが起こった。

キム・テウは、まずはドラマ「紳士の品格」の主題歌、明るいアップテンポの”High High”で客席を煽り、K-POPファン、韓流ドラマファン、老若男女の別なく一瞬にして観客を虜にした。
その類まれなるハスキーボイスに観客はひきつけられる。
しっとりしたバラードでその魅力的な声を聞かせるのではなく観客をあおり、のせる、盛り上げることに徹したステージングは15年になろうというキャリアがものを言う。
続いてドラマ「IRIS-アイリス-」のOST曲”クムルクダ(Dreaming Dream)”を聞かせた後、最後はお待ちかねの名曲”サランピ(Love Rain)”が披露され、サビでは客席にマイクを向け観客に歌わせる。

着席が義務付けられそれまでおとなしく座って聞いていた観客に、テウは「立って踊ってもいいんですよ」と声をかける。
“Love Rain”の終盤の聞かせどころ、ブレイクしてのロングトーンで盛り上がりが最高潮に達した後、今日の出演者Jewelry、A PINKの面々が再びステージに戻って、客席総立ち、賑やかな大団円となった。

キム・テウが最後をしっかり締めたことで今回のコンサートは日韓の文化交流のためのイベントだったことを強く思い出させられた。
MCでテウは東京オリンピックの開催決定をお祝いしたいという言葉とともに、自分やアイドルグループだけでなく、先輩や後輩、広く韓国の音楽、文化を応援してほしい旨をMCで観客に伝えた。
具体的に口には出さなかったが、両国の軋轢が高まっている情勢を踏まえての発言であろう、現在このタイミングで日韓文化交流のイベントのトリをつとめているということに非常に自覚的な発言だったと思う。
音楽という国境や人種を越えうるエンターテインメントで、両国間の文化交流が更に深く行われればと切に願い会場を後にした。

(文:ecstasy1018 / 写真:編集部・TAMI)